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前回は、「自然の中でのスポーツ・体験活動を!」というテーマで、子どもたちの自然の中での活動の必要性と六甲全山縦走についてお話ししました。山登りは歩行と違って体重を垂直方向へ持ち上げますので、運動のエネルギー消費量や強度が歩行に比べて増大し、体力のアップ・健康増進に効果的といわれています。
では、歩行やハイキングは、本当に健康運動として効果的なのでしょうか?もしそうならば、どのような点に留意すればよいのでしょうか?今回は効果的な歩行についてお話します。
歩行は日常生活の中でもっとも頻度の高い運動でしょう。家の中を移動する、買い物に行く、散歩に行く等、歩行は体重の水平方向への移動という運動で下肢筋群が働き、代表的な健康有酸素運動です。近年、欧米では健康保持・増進のために歩くことをエクササイズウォーキングと呼びます。日本ではエクササイズウォーキングを普通に歩くことと区別するために、ウォークングと呼んでいます。では、歩行とウォーキングの違いはどこにあるのでしょうか。
一般にウォーキングの方法として、次のような点に留意するのが望ましいと言われています。
「やや速く歩く」
「あごを引き、まっすぐ前を見て、背筋を伸ばして良い姿勢で歩く」
「いわゆる内また・外また歩行をしない」
「着地するとき膝を前方に伸ばし、かかと着地つまさきキックで歩行する」
「肘を曲げ、腕を軽く振りながら歩行する」
これらのポイントは安全かつ効果的な運動強度にするためのエッセンスです。一言でいえば、「良い姿勢で、腕を振り、歩幅は大きめで、かかと着地のつまさきキックで、やや速い速度で歩く」ということです。短パン・Tシャツ・帽子・ウェストポーチにウォーキングシューズのスタイルで、颯爽と歩いているウォーカーの姿がイメージできるでしょうか。
さて効果的な運動強度にするためには、歩幅を拡げるか、歩数を多くするか、あるいは両方を増やし、歩行速度を上げる必要があります。ですが歩幅を拡げるには限度があります。歩幅の拡張は身長の50%程度までが限度で、以後は歩数の増加により速度を上げることになります。しかし脚力の弱い人や高齢者はウォーキング速度をあげると膝を上げることができなくなり、足がもつれ、つまずくなど転倒の危険性も増してきます。ですので平坦路のウォーキングでは運動強度の増大には限度があります。
そこで最近はダンベルを持つとか、手首・足首・腰に荷重をつけるとか、ウェイトジャケットを着て歩行するとかして、運動強度を上げることが行われています。このように負荷がプラスされたウォーキングは、上肢の筋にはよいトレーニングとなりますが、我々の研究によりますと予想される程は下肢の筋群や呼吸循環機能にプラスの負荷とならないという結果を得ています。
そこで何か重りを身体に負荷するかわりに提案したいのが坂道歩行です。自分の体重を垂直方向へ持ち上げるという坂道の効果を利用するのです。六甲全山縦走のような厳しい坂道でなくても構いません。我々の実験結果では、1度の坂道で下肢筋群の筋の放電量が10%程増加し、下肢筋群の運動としても効果的であることを認めています。
神戸市は背後に六甲山があり、各山筋に10を越える毎日登山会があります。多くの近隣の住民が早朝から山筋登山を行っています。そのような登山会の一つに、神戸大学のすぐ下に一王山登山会があります。山筋登山といっても坂道ウォーキングに格好のなだらかなコースです。そのコースに早朝から多くの住民が登ってきて、全員で独自の体操をした後、下って行きます。
そのような早朝登山を行っている高齢者253名(67±7歳)の体力と早朝登山の効果を調べたことがあります。その彼らの登山実施状況を平均と標準偏差で示しますと、
● 登山歴は11±7年
● 登山回数は2790±2717回
● 実施頻度は週6±1日とほぼ毎日 l 自宅からの距離は2±1km
● 登山時間は29±2分間
● 登山歩行速度は72±27m/分でした。
決して速くない速度での坂道ウォーキングを1日約30分、ほぼ毎日実施しているとことになります。この継続に注目してください。彼らの体力を、同年代の都市在住で日頃規則的な運動を実施していない高齢者と比較しますと、明らかに早朝登山群の方が、一般群より脚の筋力や柔軟性が優れていることが分かりました。また、体力の維持向上には、登山の速さより登山距離の方が大きく影響していることもわかり、高齢者にとって安全且つ効果的なウォーキングということも分かりました。
このように、加齢による体力低下を軽減させる客観的効果だけでなく、多くの高齢者早朝登山者が「体調がよくなった」、「足が丈夫になった」、「風邪をひきにくくなった」、「友人ができた」、「毎日が楽しくなった」、「気持ちに張り合いがでてきた」という、主観的な身体的・心理的・社会的効果を実感していることが健康の維持増進という面から大きな効果と実感しました。
この調査・研究を行うため、1週間午前3時というまだ暗い早朝から現地に行き・測定し、そして一仕事終えて時計を見るとまだ午前8時くらいで、1日が何と長いことかと感じるとともに、1日で2日分働けたと感じる充実した1週間だったことを思い出します。ひょっとしたら彼等の健康・体力の源は、仲間と一緒に話しながらの毎日登山もさることながら、日々早起きを続けるという規則的なライフスタイルかもしれませんね。ウォーキングの話が変な落ちとなってしまいました。
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