テレビコマーシャルで、たくましい若者が崖から落ちそうな仲間を片手で引き上げて助けるシーンがあります。カッコ良いですね。
でもあんなこと可能なのでしょうか?決してまねしないで下さい。
「ファイト、いっぱーつ!」なんて言っていられないですよ。
今回は、あの若者の力強さの秘訣、無酸素運動についてお話します。


 無酸素運動の代表的なのが筋力トレーニングです。一般にきつい・しんどいとイメージされている運動です。しかし、この筋力トレーニングは近年健康づくり運動として、その重要性が見直されています。
アメリカでは高齢者の健康維持・増進に筋力トレーニングが多いに導入されています。
また身体各部位の筋力トレーニング種目をサーキット的に組み合わせ、サーキット・ウエイト・トレーニングとして、心臓リハビリテーションプログラムにも応用されています。要はやりようです。
 健康運動としての筋力トレーニングのねらいは、筋量および筋力のアップです。
筋量の増加は、相対的に体脂肪率が減少することになり、健康増進に有効とされています。また筋力のアップは、良い姿勢の保持や転倒予防にもつながり、生活の質的向上を導きます。
近年我が国おいては、高齢者の転倒→骨折→寝たきりの増加が大きな社会問題となっております。これに対する体力科学的対策として、脚筋力を中心とする筋力および柔軟性の向上が必要と言われています。
 では、安全で効果的な筋力トレーニングには、どのようなことに注意すればよいのでしょうか。
前回の有酸素運動の説明と同じように運動処方の要因ごとに考えてみます。

まず運動部位について。
運動部位については、主要筋群で構成され、身体全体を含む8〜10 種目の運動で構成するのがよいとされています。
その種目の決定には、身体を上肢、体幹、下肢に分け、次に各部位ごとに拮抗筋をトレーニングする種目を選びます。
これで6種目になります。
あと2〜4種目は筋量の多い下肢か体幹から選びますと、8〜10種目が出来上がります。
拮抗筋とは腹筋と背筋のように、ある動的動作を行う場合、一方が収縮すると他方が弛緩するという関係にある筋を意 味します。
トレーニング部位の視点でもうひとつ大切なのは、身体の左右をバランスよくトレーニングすることです。
身体の前後・左 右の筋力のアンバランスは、肉離れ等のスポーツ障害の原因となります。
 次は筋力運動の強度と時間についてです。
どれくらいの重さを使えばよいかということです。初心者が悩む点です。
この点に関しては、重さを決めるのではなく、最大の反復回数から決定するのが一般的な方法です。
この方法をRMといいます。RMとはRepetition Maximumの略で、ある重さを疲労困憊まで何回反復できるかということです。
10RMとは最大10回反復できる重さを意味します。ですから1RMの重さは、持ち上げることが1回しかできない最大の重さということです。そして、筋力・筋量のアップには10〜12RM の重さが効果的とされています。
しかし、初心者にとっては10RMは結構厳しいものがあります。
私は初心者には30RMの重さから始 めることを提唱しています。この重さは初心者には効果もあり何よりも安全です。慣れてくるに従い、徐々に10RMに持っていけばよいでしょう。
このような各部位の筋力運動を十分な休息をはさんで2〜3セット実施します。この時の反復回数とセット数が筋力トレーニングでの時間条件となります。トレーニングの結果、同じ重さでの反復回数が増えたならば、筋力がアップしたことになります。
一般的には10RMの重さは最大筋力の70〜80%に、30RMの重さは40〜50%に相当します。筋量の増加は自分の目で確かめて下さい。
トレーニングの頻度に関しては、前述の部位、強度、セット数の運動を週2日実施すれば 効果的とされています。

 最後に、筋力トレーニングを実施する際に注意しなければならない点をいくつか述べます。
まず運動中は息を止めず、必ず呼吸状態で実施して下さい。
特に高齢者や血圧の高い人は注意して下さい。息をこらえて力むと血圧が上がります。また 高齢者は青年と比較すると、心拍数よりも血圧の上昇が著しいことに特徴があります。
つぎに、筋力運動をいやがる原因として筋肉痛 があります。運動効果は決して楽して得られるものでなく、多少の筋肉痛はつきものですが、筋肉痛の原因として筋の過伸展があります。筋が過剰に引き伸ばされることです。ですから筋力トレーニングにおいては、持ち上げた重りを急激に下ろしたりして、筋を過伸展しないようにすることにより、筋肉痛は多少なり予防できます。また重りを重力に逆らいながらゆっくり元にもどすと、より効果的です。
これだけでは、安全で効果的な筋力トレーニング処方について十分説明出来たとは思っていませんが、少しはやってみようという気になってくれたでしょうか。
私は、慢性的な姿勢の乱れが、健康な身体を害する大きな要因と思っています。
筋力運動で腹筋・背筋等の姿勢を維持する抗重力筋を鍛え、良い姿勢を保って下さい。

「ファイト、いっぱーつ!」
以上

平川 和文
神戸大学発達科学部

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