|
○個人の危険因子の有無・・・
危険因子とは、ご存知のように肥満、運動不足、高血圧等、虚血性心疾患を引き起こしやすい要因のことです。リスクファクターともいいます。
●運動の許容限界・・・・・・
運動許容限界とは、どれくらいの運動強度まで、血圧、心電図、心拍数等が正常な応答で運動が遂行できるかという運動実施の許容範囲のことです。
◎最大酸素摂取量・・・・・・
最大酸素摂取量とは全身持久力の代表的な指標で、運動処方には欠かせないものです。
今回のお話のテーマである運動負荷検査とは、●運動許容限界と◎最大酸素摂取量を測定するための検査です。
フィットネスクラブで経験された人もおられると思いますが、自転車漕ぎあるいはトレッドミル(ランニングマシーン)上での走歩行時の心拍数・血圧等を、数種の運動負荷において測定するテストです。実は、運動負荷検査でなぜ最大酸素摂取量が測定できるのかを理解することは、健康運動に関する大切な知識が理解したことになります。今回はこの原理を説明して、ちょっぴりスポーツ科学の裏側を知っていただきたいと思います。
運動負荷検査は次の3つの法則を経て最大酸素摂取量を測定します。
それは、1)運動負荷量と心拍数の直線関係の測定、2)最高心拍数の推定、3)最大運動負荷量の最大酸素摂取量への変換です。ややこしそうですが、決してそんなことありません。
それでは皆さん自身も心拍数を測定しながら、自転車マシーンを漕いでいる状況を想像しながら以下を読んで下さい。
運動負荷検査を実施する場合、
1) まずコンピュータ部に性別、年齢、体重を入力します。入力された性・年齢情報から、その性・年齢に相応した初期の運動負荷が設定され、自転車運動がスタートされます。
↓
2) 3分前後経過した後、運動負荷が少し重くなります。即ち漕ぐのに力が余計にかかるようになります。それから数分後また運動負荷が重くなります。ここのように3段階くらい異なる運動負荷での自転車運動が行われ、それぞれの運動負荷時の心拍数が測定されます。
↓
3) 次が大切なことなのですが、運動負荷と心拍数は心拍数約110〜120拍/分以上になると直線関係にあることが明らかにされています。即ち、前述の3段階の運動負荷をかけることにより、心拍数を指標とした運動負荷に対する生体応答の法則を求めているのです。
以上が法則1です。
心拍数を計ることにより、生体への負担の程度がわかるのです。だからインストラクターは安全管理のため、心拍数の測定を要求するのです。この心拍数と運動負荷の直線関係は計算式上では無限に続きますが、実際はそんなことありえません。どこかの運動負荷に達しますと、疲労困憊に至り運動続行不可能となります。言い換えればこの時点までは、呼吸循環系が一生懸命がんばり酸素を取り込んで運動エネルギーを作りだしていることになります。即ち、この時点がその人の最大酸素摂取状態と考えられます。ゆえに、最大酸素摂取状態は心拍数―運動負荷関係から考えますと、心拍数が最高のとき即ち最高心拍数の状態で出現するになります。最高心拍数は220―年齢で推定されます。
運動負荷検査スタート前に入力した年齢がここで利用され、法則1で得られた心拍数―運動負荷関係式に最高心拍数を入力して、その時点の運動負荷、即ち最大運動負荷量が求められます。これが法則2です。
しかし、最大運動負荷量の単位は自転車運動ならwatt(ワット)、トレッドミルによる走歩行なら速度(m/min)という単位であり、酸素摂取量の単位(ml/kg/min)ではありません。最大運動負荷量を最大酸素摂取量に単位を変換する必要があります。このためには、運動負荷検査の運動様式が全身運動であって運動負荷量が計算でき、しかもその運動の効率(消費された総エネルギー量に対する運動に使用された割合)が、人により大きく違わないことが必要です。即ち、全身運動であるためには、身体の多くの筋が存在する下肢が運動に参加することが必要です。
次に、運動量が計算できるためには動作が単純で、体重の水平 ・垂直方向への移動距離が測れるものでなくてはなりません。また、運動の効率が一定であるためには長年にわたって行われている運動で人により動きが違わないものでなければなりません。これらの条件を満たした運動が走歩行、自転車漕ぎ、階段昇降運動などの運動です。エアロビクスダンスは走歩行より楽しいですが、人により動きもことなるとともに、運動量を評価することができません。走歩行運動は単純で楽しさに欠けますが、運動負荷の視点からみると、とってもメリットのある運動なのです。そして実際に走歩行中の酸素摂取量と心拍数を測定した実験より、例えば、走行時の酸素摂取量(ml/kg/min)は走行速度(m/min)_0.2+3.5という式から計算出来ることが明らかにされています。これが法則3です。
そして運動負荷検査が終わると、この結果がプリントアウトされるわけです。 如何でしょうか。運動負荷検査のしくみ、心拍数を計るだけでなぜ最大酸素摂取量が求まるか理解して頂けたでしょうか。もし理解して頂けましたら、みなさんの最大酸素摂取量は、ストップウォッチひとつと近所のワンブロックの距離がわかれば、自分で測定することが出来ますね。
平川 和文(Kazufumi HIRAKAWA)
E-mail:kurara@kobe-u.ac.jp
神戸大学 発達科学部 人間行動・表現学科 身体行動論講座
大学院総合人間科学研科
|