皆さん、重たい物を運んだり、長時間スコップで土を掘り続けたりした翌日、腕や足を真っすぐ伸ばしたり、肩を回したりするだけで筋肉痛を感じた経験はありませんか。これは、筋を長時間使った後、十分なストレッチングがなされていなかったため、筋が縮んだ状態になっているからです。今回はストレッチングを中心に、ウォーミングアップ(W-up)クーリングダウン(C-down)についてお話します。


 一般に、1度の運動はW-up・主運動・C-downで構成されます。主運動はスポーツ活動であったり、トレーニングであったりします。Wーupは、主運動が最も効果的に実施されるために行われます。その構成の基本的は、ストレッチング、体操および主運動の基本動作(例えば、主運動がサッカーならパスとかドリブル)の3種類のか運動ら成ります。W-upで関節の可動域を広め、体温・筋温を上昇させ、主運動を安全で効果的に実施できるようもっていきます。一方、C-downは基本的にはW-upと逆の順、即ち、主運動の基本動作→体操→ストレッチングの順で行われ、主運動により高められた身体機能を素早く安静状態に回復させるのがねらいです。これら一連の運動は、ヒトの集中力の持続から考えて、約2時間というところが、安全で効果的な運動時間でしょうか。C-down後、シャワー、マッサージ、リラクゼーション等の積極的な休息により、疲労を早く回復させ一日の運動を終了します。

 次に、ストレッチングを中心にお話します。ストレッチングは色々な方法が報告されていますが、ここでいうストレッチングとは静的ストレッチングのことで、筋を痛みを感じず気持ちの良い程度に一定時間伸展させた状態を維持する運動のことです。ご存知のように、運動は筋の収縮によって行われます。筋は疲労しますと縮んだ状態になります。この状態でほっておくと、次に筋を収縮させる時十分な筋出力を発揮することができなくなるだけでなく、急激な伸展時に肉離れ等の筋傷害を起こす可能性が高くなります。静的ストレッチングは疲労した筋を伸展させ、主運動での筋力の低下と筋・関節の障害を予防する狙いがあります。このように考えますと、W-up、C-downでのストレッチングの重要性が理解できると思います。

 静的ストレッチングに対して動的ストレッチングがあります。W-up運動の一つである体操が動的ストレッチングに相当します。いわゆるラジオ体操のような運動で、関節の可動域を拡げるとともに、筋温・体温の上昇にも効果的です。最後にW-up、C-downのもう一つの運動である主運動の基本動作では、主運動でよく使う筋の収縮を円滑にし、主運動を安全に遂行できる状態に持って行きます。よく「W-upはどれくらいしたらいいの?」という質問を受けますが、この質問に関しては、主運動の特性(運動の強度・時間、身体使用部位等)により異なり、一言で言うことは難しいです。しかし、一般的な健康運動を目的としたW-upでは、3種の運動を通して12分前後行い、うっすらと発汗を感じる程度で良いのではないでしょうか。

 W-up、C-downで注意しなければならないことに禁忌運動があります。禁忌運動とは、疾病・障害等を持つ人が行ってはならない注意すべき運動のことです。運動によって疾病・障害がさらに悪化したり、新たな障害を発生させる可能性がある運動です。一例を挙げますと、仰向けで、膝を伸ばして、腰背部が浮いた状態から両脚を挙げるダブル・レッグ・リフト運動です。よく腹直筋の強化のため行われるポピュラーな運動です。この運動は、脊柱の椎間板に大きなストレスとなり、下肢の重たい人や腹筋の弱い人にとっては腰痛の原因ともなります。一般の健康な人なら特に注意する必要はないですが、幼児から高齢者まで幅広い年齢層、あるいは体力水準の異なる集団を指導する場合、指導者は注意しなければならない点です。普段我々が何気なく実施しているストレッチングや体操にも、対象者によっては禁忌運動と成り得ることを理解して下さい。以下に、一般に指摘されている禁忌運動の特徴を記します。
(1) 膝部、腰部、頚部の過伸展・過屈曲運動、(2) 膝部の過剰な捻りおよび外側からの加圧運動、(3) 運動中の息こらえ、(4) 各関節のオーバーストレッチング、(5) パートナーによって成される受動的ストレッチング(特に頚部)、(6) 脊椎に対する急激な圧迫・回転運動等が禁忌運動とされています。
いずれも実施するかどうかは対象者の身体的状況との兼ね合いですが、実施する場合は既製のストレッチング運動にこだわらず、急激な圧が加わらず反復回数で調整できるものを工夫して欲しいものです。例えば前述したダブル・レッグ・リフト運動なら、仰向けに寝た状態で膝を曲げて両足をフロアーに付け、両腕を体側に置いた状態から、両膝を胸の方に持ち挙げる(決して肩を越えて持ち挙げない)運動に修正すれば安全な運動となります。効果的なW-up・C-downと禁忌運動はある面では紙一重のようなところもありますが、安全な運動実施のためにも、是非禁忌運動を頭の片隅において欲しいものです。

ストレッチングは、誰もが自分のレベルに応じて実施できる運動です。
W-up、C-downの大切さ・留意点を理解して頂けたでしょうか。


文/平川 和文(Kazufumi HIRAKAWA) 神戸大学発達科学部教授

初心者も熟練者も集まれ!!
〜楽しいジョギング教室 Part2〜
初心者も熟練者も集まれ!!
〜楽しいジョギング教室〜
元気で活発な子どもを増やそう!
運動・スポーツをして体力を高めよう!!
子どもの体力低下続く・・・
スポーツにおける巧みさとトレーニング
市民ランナーにみる記録を左右する要因
ウォーキングの効果
自然の中でのスポーツ体験活動を!
現代の子どもの体力を考える
熱射病などの暑熱障害は防ぐことができる
オーバートレーニング
W-up, C-down, ストレッチングと禁忌運動
運動負荷検査って何しているの?
勝つための体力とは
無酸素運動の運動処方
有酸素運動
運動処方って何?
技術を見る目を育てる
生活習慣病
 
 
all rights reserved by Osaka City Amatuer Sports Association.