「たくましい青春と過保護な青春」

 

  ある少女シングルス一回戦でヨーロッパの選手がストレート負けをした。
まだ14、5歳であろう彼女は対戦相手と比べてまだ子供っぽく明らかに体格で劣っている。
試合前から勝負の予想はついていた。
「わざわざ日本までやってきて、ストレート負けじゃね〜・・かわいそうやな。」
「まだこの大会に出場してくるには年齢も実力も不足だな。」と感じながら私は観戦していた。
しかし試合後、通路で興奮気味にコーチと話をしていた様子は落胆した選手をコーチが慰めているのではなかった。
今の自分の力をどこまで発揮できたか、何が上手くいってどこを直さないといけないか。と言った様子であった。
まさしく"ただいま武者修行中!!"と言った様子で、たくましいのである。

毎年、世界30〜40カ国から少年少女あわせて100人ほどの次世代のプレーヤーたちがアメリカやヨーロッパまたはアジアのツアーから大阪にやってくる。
ジュニア大会は13歳〜18歳に出場資格があり、体格・筋量・技術など年齢差による実力の違いは大きい。
酷ではあるが子供と大人のような対戦も実際にある。
しかし、それを酷と思うことこそが日本的な認識なのかもしれない。
このように世界を転戦している若い選手たちは移動やコンディション作り、ランキング上位選手との対戦など、ツアーの中では一試合の勝敗以外にも色々経験をしている。
これらが将来重要な力になることは間違いない。日本選手がランク上位選手との試合を半ばで諦めたり、負け試合には自分の良いところを出せない選手が目立つのに比べて対照的であった。
そういえば、日本での各競技大会で中学1年生と高校3年生と試合することはあるだろうか?
まれに日本選手権などで参加標準記録をクリアすることで出場可能な大会もあるが、ほとんどはインターハイのように同年齢層で勝負してはいないだろうか。
だから選手もコーチも、勝敗を重要視してしまうのでないだろうか。この時期だれもが勝敗よりも大切なことが有るのは知っているのだが・・
。世界で戦うには少し過保護な環境なのかもしれない。
はたして各競技の日本高校チャンピオンが世界に羽ばたいているだろうか?
さらに日本でトップにならないと、世界に挑戦できなくていいのだろうか?

  91年、この世界スーパージュニアテニス選手権大会の前身であるコカコーラ杯の少女シングルス・ダブルスで優勝し、日本人初の世界ジュニアランキング1位になったのが当時16歳の杉山 愛であった。
翌年、彼女はプロとして活動するために通信制高校へ編入し、世界で戦うことを選んだのであった。
現在では日本のエースとして、1999全米ではミックスダブルス優勝、2000ウィンブルドンでは女子ダブルスで準優勝と活躍している。
ここに至るまで世界のレベルで揉まれて、多くのゲームを経験し、実力不足を補うために練習を繰り返してきたのだろう。

 テニスに限らずサッカー日本代表監督P・トルシェも「経験することの重要性」が成長するための必要不可欠なエッセンスであると言っている。
彼のインタビューで「日本では、すぐに勝敗だけを重要視する傾向が強い。
確かに何が何でも勝たなければいけないゲームも有るが、しかし勝つことが成長の重要な要素ではない。
特に若い選手は色々なことを体験し、経験の中から何か新たなことを感じることで成長できるのだ」と発言していた。
世界ユース選手権で日本チームの銀メダル獲得に大きく影響したのはそういう世界的視野に立った指導であったのであろう。

武者修行の先にあるものは、グランドスラムで戦う姿なのかもしれない。
たとえプロテニスプレーヤーになれなくても、すばらしい青春ではないだろうか!
勇気もいるし挫折も感じるだろう。
また誰にもできることではない。
そう考えると負けた選手であっても、羨ましい青春と思う。
「若い頃の苦労は買ってでもしろ。」、「Experience is the best teacher.(経験は最良の師)」そんな言葉をあらためて考えさせられたシーンであった。

この大会を観戦して若いパワーを浴びてみるのもいかがなものだろうか。きっと応援したくなる選手がやってくるはずなのだから・・。

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