< 2004世界スーパージュニアテニス選手権大会を観戦して >
 毎年、この時期には秋雨前線が活動し秋の涼しさを感じさせるのだが、今年はまだ夏の太陽が顔をのぞかせているのかと勘違いするほどの好天のもと、シングルス決勝戦が開催された。本サイトで掲載済みのように、「大会みどころ」のキーワードを『アジア選手の台頭』としたが、男女ともにアジアの旋風を巻き起こした大会となった。
Girl's Singles Final
Dominika Cibulkova ドミニカ・チブルコワ(スロバキア) ランキング32位 今大会第4シード
Caroline Wozniacki カロライン・ウォズニアッキー(デンマーク) ランキング75位 今大会第9シード
 昨日、福井恵実・前澤かおるの日本人ペアが少女ダブルスで13年ぶりに優勝した。その余韻が残る中、朝から靱テニスセンターに詰め掛けたファンは昨日に引き続き3,000人を超えた。選手に負けないほどの熱気が観客から感じられる。
 15歳のチブルコワは、優勝経験はないものの上位の大会で常に安定した戦績を残す。この1年間でシングルス・ダブルス合わせて35戦をこなすスタミナとパワーの持ち主である。今大会は、準々決勝で第11シードの瀬間詠里花(日本)を6−4、6−2と破り、準決勝では第1シードの・詠然(台北)を6−4、6−4と倒した。
 一方のウォズニアッキーは、大会当日若干13歳でありながら、2004年のジュニアサーキットでシングルス4勝・ダブルス2勝と、好成績を残している。また、今大会日本人トップの森田あゆみを準々決勝で破っている。両選手ともこの大会に勝つとグレードA初優勝となる。来年度以降の活躍を考えれば、どちらとも落とせないビッグタイトルである。
 精神面、体力面ともに充実しているのか、チブルコアが先にコートに立った。「早く試合がしたい」という気持ちがそうさせたのだろう。ゲームはウォズニアッキーのダブルフォルトから始まった。ウォズニアッキーはファーストサーブが入らない。一方のチブルコワはフォア・バックともにスピードとパワーがウォズニアッキーを勝っているように見える。アングルショットも決まり、相手のショットもことごとく返し、チブルコワの調子が非常によいのが感じられた。
 チブルコワのペースで第3ゲームまで3−0の一方的な試合運びとなるが、ウォズニアッキーも負けてはいない。第4ゲームから、リターンがベースライン付近まで深くなり、第5ゲームにはこの試合始めてのサービスエースが決まった。このゲームを奪取したことによりウォズニアッキーに勢いが付いた。第5ゲームまでチブルコワの3−2で、一進一退の白熱した試合展開を誰もが予想しただろう。
 しかしながら、第6ゲームに一つの出来事により展開が大きく変わった。  第6ゲームはチブルコワのサービスである。チブルコワは、サービス前にラケットを見つめ、ガットを調えることにより自分のリズムに戻し、精神面の安定を図っていたようである。しかし、レフリーからサービスまでの時間が長いとこの試合2回目の注意を受け、ペナルティーとして相手にポイントが入ってしまい、0−30となった。その後30−30まで戻すが、この頃からチブルコワのほうにミスが目立つようになってきた。結局第6ゲームはウォズニアッキーが取り対戦成績も3−3の全くのタイスコアーとなった。

 これで流れが完全にウォズニアッキーに傾いてしまった。ファーストサーブが入りだし調子が上がってきたのが素人目にもはっきりと見てとれる。これが初めての大舞台だとは思えないくらいの堂々としたプレーを展開した。一方のチブルコワは粘りを見せるもミスが重なり、流れを変えることができなかった。結局は、3−6とウォズニアッキーがあっさりと第1セットを取った。
 流れを完全に自分のものにしたいウォズニアッキー、第1セット序盤の勢いを取り戻したいチブルコワ。お互いの思惑が渦巻く中で第2セットが始まった。しかし、勢いの付いた流れをせき止めることは今日のチブルコワにはできなかった。第1セット後半のラリーの応酬から、彼女の持ち味とする強打に変更するも、ボールがネットに引っかかる。ベースラインのショットがオーバーするなどいつものプレーができない。
 第3ゲーム終了後、チブルコワが左足太腿部の違和感を訴え3分間のメディカル・タイムアウトを取った。大腿部をテーピングで固め痛々しい。このタイムアウトがきっかけとなり、流れを取り戻したいと思っただろう。

 しかし願いは叶わなかった・・・。その後も13歳とは思えない落ち着きと、安定したショットを繰り出すウォズニアッキーにチブルコワも打つ手なしといったところか。第2セットもウォズニアッキーが6−0で取り、この試合12ゲーム連続奪取という離れ業を行った。日本で言えば中学2年生に当たる年齢でのグレードA大会のビッグタイトルを勝ち取ったウォズニアッキーは、満面の笑みで観客に喜びを伝えた。

Boy's Singles Final
金 善龍 キム・ソンニョン(韓国) ランキング11位 今大会第1シード
田 雄善 チョン・ウンサン(韓国) ランキング12位 今大会第2シード
 今大会の第1シードのキム・ソンニョン(ランキング11位)と第2シードのチョン・ウンサン(ランキング12位)が戦う予想通りの決勝戦となった。2人の過去の対戦成績を調べてみると、6戦中キムの5勝と一方的ではあるが、実力が伯仲しているだけに何が起こるかわからない。スピードのキム、パワーのチョンとプレースタイルは異なるが、互いにプレーを知り尽くしているだけに好ゲームが期待される。昨日のダブルス決勝戦では、お互いにパートナーとして戦い優勝している。ともにこの試合を勝てば至上9人目のシングルス・ダブルスのダブル優勝の快挙となる。
 第1セット第1ゲームから長いラリーが続く。お互いに出方を探っているのだろうか全く譲らない。ベースライン・サイドラインを狙い通りにボールを打つスキルを両選手とも持ち合わせている。アドバンテージが4度も繰り返されるほど緊迫した試合。その均衡を断ち切ったのがキムのダブルフォルトだった。この長い第1ゲームを取ったチョンに流れが傾いた。第2ゲームからチョンのパワーサーブが徐々に顔を覗かせる。キムが一歩も動けないサービスエースが決まりだし、チョンの放つアングルショットもオンザライン。ネット際のプレーも落ち着いている。第3ゲームキムの15−40の場面で、チョンの強烈なショットに対しロブを上げるのが精一杯のキムは、その後ボールを追わずにベンチに向かったのである。もし、キムが諦めずにボールを追いかけていれば・・・。これで完全にチョンに勢いが付いた。サービスエース・リターンエースなど、パワープレイでポイントを積み重ねるチョンに対し、ボレーミス・ダブルフォルトと調子の上がらないキムという図式が、はっきりとしてきた。第6ゲームはキムが一矢を報いてブレイクするも、ゲームの流れを変えることはできずにチョンが6−1でほぼ一方的な展開となってしまった。
 今大会第1シードのキムはこのままおめおめと引きさがるわけにはいかない。17歳のキムはこの大会でビッグポイントを取って、来年のジュニアツアーを優位に進めていきたいはずだ。ジュニアランキングトップの座も夢ではない位置に来ているからこそ、自分のリズムに引き込みたい。
 第2セットはブレイク合戦で幕が開いた。しかしながら、第3ゲームではチョンのサービスエースが3本決まり、チョンのパワーも健在だ。この流れを何としてでも打破したいキムは、第4ゲームから攻撃スタイルをストローク戦からネットプレーに変えてきた。その作戦が功を奏し、このゲームはラブゲームで取ったものの、チョンも簡単にはブレイクさせない。両選手とも自分の持ち味を出し、ジュニア大会とは思えないフォア、バックのテクニックやスタミナ・スピードに場内が酔いしれているかのようだ。ファインプレーの応酬に観客席からも惜しみない拍手が続く。両選手ともサービスをキープし続け一進一退のプレーが続く中、6−6にまでもつれ込んだ。第12ゲームをキープしたキムは、感触を掴んだのか笑顔が見えた。
 タイブレイク戦では、両選手ともビッグサーブを出し合い、一歩も譲らない。3−3のタイスコアーで迎えた7ポイント目、ラリーが続き、チョンがネットプレーに出てきたところを技ありのロブをあげ、キムがポイントを奪取した。おとなしいキムからガッツポーズが出る。流れを掴みかけた8ポイント目で、キムの放ったサイドラインの際どい判定にアウトと宣告された。オンザラインと思いガッツポーズを見せたキムは驚きを隠せず、しばらくラインを見つめた。一方、チョンは精神を集中させているのか、ポーカーフェイスを崩さない。その後キムのリターンミスが続き、最後はチョンに勝利の神様が微笑んだ。
 優勝が決まった瞬間、チョンは両腕を天に掲げ、誰かに感謝するかのようにしばらく天を見つめた。全身を使って勝利の喜びを表現しているチョンの表情にはまだあどけなさが残るものの、大会至上9人目のシングルス・ダブルスのダブル優勝に輝いたウイナーとして申し分ない風格が漂っていた。



※文章内のランキングとはITFジュニアランキングのことで順位は今大会のメインドローに掲載されているものを使用し、年齢は2004年10月17日現在。
 
< 各 種 表 彰 者 >
 
●少女シングルス
優 勝:カロライン・ウォズニアッキー(右)
準優勝:ドミニカ・チブルコワ(左)
●少年シングルス
優 勝:チョン・ウンサン(左)
準優勝:キム・ソンニョン(右)
●少女ダブルス
優 勝:福井恵実、前澤かおる(左)
準優勝:ミッシェル・ブライキー、シャイナ・マックドウエル(右)
●少年ダブルス
優 勝:チョン・ウンサン、キム・ソンニョン(右)
準優勝:マイルス・ブレーク、アブダラー・マグダス(左)
 
 
 

2004世界スーパージュニアテニス選手権大会 
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