< 2005世界スーパージュニアテニス選手権大会を観戦して >
 今年は大会期間7日の内、3日間雨に降られたので、選手達はコンディション作りに苦労したのではと思う。大会6日目は雨のためにすべての試合が翌日にスライドし、大会最終日にシングルス準決勝、決勝とダブルスの決勝をおこなう強行スケジュールの開催となった。会場には過去10年間の中で最も多い6,500人が会場に集まった。
 少女シングルス決勝
ビクトリア・アザレンカ(ベラルーシ) 16歳 ランキング 1位
森田あゆみ(パームインターナショナルTA)   15歳   ランキング21位
 日本テニス界の期待の星、森田あゆみが、世界最高峰であるGA(注)大会の決勝戦に進出してきた。今年の4月に史上最年少プロ登録としての承認を得、トップテニスプレーヤーの第一歩を踏み出した森田は、全仏オープンジュニアでのベスト4進出など着実に成長している。今大会では第4シードとして出場し、準決勝戦まで対戦相手に1セットも奪われない安定した戦いをしてきている。その中でも、過去1勝3敗と苦手としている前年度チャンピオンのウォズニアッキーを打ち負かした準決勝戦は非常に大きな自信となっただろう。  
 対する今大会第1シードのアザレンカは、今期、全豪・全米オープンジュニアで優勝、ダブルスでは全豪・全仏・ 全英オープンジュニアの3冠を奪取しており飛びぬけた存在である。彼女もプロテニスプレーヤーとして活躍して おり、この大会をジュニア大会最後の出場と位置づけている。この大会をステップにして世界に飛躍したい森田と、 ジュニアとして有終の美を飾りたいアザレンカ。ともにハードヒットを、プレースタイルとしているので、ラリー の応酬・力の勝負となりそうだ。アザレンカという大きな壁に立ち向かう森田に、否応なく期待が膨らむ。
第1セット序盤、アザレンカはラリー合戦にも全く動じずボールの緩急や横の揺さぶりを織り交ぜ、 さまざまなプレーを展開する。一方、森田もパワーボールを打ち返しているが、ラインオーバーやネットに 引っ掛けるなどのリターンミスが目立つ。第2ゲームまではアザレンカのペースで試合が進むが、森田も このままでは終わらない。第3ゲームになって硬さが取れたのか、ようやく森田らしいプレーが随所に出てきた。 アザレンカのお株を奪う横への揺さぶりやネットプレーなど、多彩なプレーでアザレンカを苦しめる。 第5ゲームを終えて、3ゲームを連取した森田は逆転に成功した。その後第8ゲームまではサービスを キープし合う。第9ゲームは激しいストローク戦を繰り広げるが、森田はリターンショットをネットに引っ掛けたり、ダブルフォルトを出したりで、アザレンカにブレイクされてしまった。ここで踏ん張りを見せたい森田は、第10ゲームで粘りを見せるが、森田が放つショットをアザレンカはことごとく拾い返してくる。第1セットは森田のネットミスで終わった。
第2セットでも引き続きアザレンカに強打で挑む森田だが、強打一辺倒で淡白な攻撃となってしまっている。一方アザレンカは、変わらずにさまざまなバリエーションで多彩な攻撃を仕掛けてきている。ラリー合戦は互角なのだが、森田のミスショットで終わるという形の繰り返しで、あっという間に4ゲームの大差をつけられてしまった。その後森田が巻き返しを見せるも、1ゲームを取り返すのが精一杯。このセットもアザレンカが奪い、今期GA大会3勝目を飾った。ラケットを叩き素直に勝利を喜ぶアザレンカには少女っぽさが垣間見えるものの、ワールドランキング1位の風格が漂っている。
全てのショットに気合を出し、納得のいかない判定に怒りをあらわにするアザレンカと、闘志を内に秘め、淡々とプレーをこなす森田。今日は試合の流れをいち早く察知して、流れを掴んだアザレンカが一枚上手だったようだ。森田が流れを掴むためには、相手に負けない「気迫」が必要なのではと感じた。納得したプレーが出たらガッツポーズを出したり、声を発したりしても構わない。自分に流れを呼び込み、会場の雰囲気を森田色に変えることができれば、優勝もあったのではと思う。実力に「気迫」がともなえば、今の森田には「鬼に金棒」となるだろう。
 少年シングルス決勝
ジェレミー・チャーディー(フランス) 18歳 ランキング3位
マリン・チリッチ(クロアチア)   17歳   ランキング5位
 少年男子シングルス決勝は全英オープンジュニアチャンピオンのチャーディーと、 全仏オープンジュニアチャンピオンのチリッチの第1・2シードという順当な決勝戦と なった。2人は過去に2度対戦しているが、ともに1勝ずつと互角の成績。187cmの チャーデイーと196cmのチリッチ。共に、長身を活かした高い打点から繰り出す 鋭角で高速なサーブを武器とする2人。パワーテニスの応酬となることは想像に難しくない。  
 第1セット第4ゲームまでサービスをラブゲームで取り合う。お互いに相手の出方を探っているようだ。パワーとスピードで、持ち味のテニスを繰り広げるチャーディーに対し、予想に反して、サーブにスピードは感じないが、ミスが少なく安定したプレーのチリッチとスタイルの違いがはっきりしてきた。お互いに絶妙なコースをついたサービスエースやパッシングショットが連発し、打たれた方は全く動けない。プロの試合と何ら遜色のない試合が繰り広げられる。
会場には張り詰めた緊張感が漂い、観客一人ひとりが質の高い試合に息を呑んでいる。
 第6ゲームまでサービスをキープし合うも、第7ゲームはチリッチがブレイクに成功。第9ゲームでは14本の熾烈な戦いの末、パワーで上回るチャーディーがサービスをキープするが、常に安定したプレーのチリッチが要所にパッシングショットを決め、このセットはチリッチが取った。第2セットも、2人のスタイルが変わることがなく、チャーディーはパワーテニスで押しまくる。サービスエースを量産するのだが、リターンミスやラインオーバーも多く、なかなか流れを掴むことができない。一方、チリッチはここというポイントをきっちり決めてくる。
 チリッチが1ゲームをリードして向かえた第10ゲーム。今日の2人の戦いを 集約したゲームとなった。ともに負けられないという思いが、プレーににじみ出て いた。チャーディーは、疲れという言葉を知らないようだ。1時間以上戦い続けて いるにもかかわらず、今まで以上にスイングスピードが速くなっている。感情を あまり表に出さないチリッチもチャーディーのミスにガッツポーズを見せるほど エキサイトしていた。
 このゲームでチリッチが放ったサーブは31本。8回もの アドバンテージの移動があった。この死闘に終止符を打ったのが、チャーディーのリターンオーバーだった。技術や、実力がほぼ互角同士の戦いでは、ミスの積み重ねが明暗を分ける。「我慢のプレーをして相手のミスを誘い出す」。パワープレーにはこの戦術といったお手本のような試合をチリッチはやってのけた。

※(注) 「GA」はITFジュニアトーナメントのグレードを表し、高いものから「Group A」「Group B」「Group 1〜5」と分かれている。「Group A」は世界中で9大会開催されており、世界のトップレベルジュニアが集まる。本大会はアジアで唯一の「Group A」大会である。

※文章内のランキングとはITFジュニアランキングのこと。年齢・ランキングともに2005年10月16日現在。


2005世界スーパージュニアテニス選手権大会 
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