平尾誠二氏 講演

   
演題 「ラグビーに学ぶリーダーシップと強い組織づくり」
 僕は陶化中学校からラグビーを始めて、寺本先生に出会いラグビーはこんなに面白いということを教えてもらいました。一緒にグラウンドで走ってくれて大変面白く感じ、もう一つ、ラグビー部員が当時15人ギリギリいるかいないかだったので、補欠がなく、必ずゲームに出ることができました。こういう環境で、ゲームの面白みを体験出来たのが非常に良かったと思います。ところが、大勢の部員がいるクラブはそうではなく、補欠期間があります。日本のスポーツの一番いけない所は補欠を作ることだと言われる方もいます。ゲームをする機会をどれだけ与えているかが重要です。目標や問題意識などはゲームをしてみないと出てきません。すぐにゲームをさせて楽しませてあげないといけません。その中でそれを改善、克服していく努力は日常の練習で行われているのです。レベルがどうであれその機会創出がスポーツ振興する上では重要なことです
   
 伏見工業高校に入り、山口良治先生に出会うのですが、厳しい先生でした。練習はきつくて3年生のメニューをしますから、当然1年生の時は辛かったです。先生の練習は厳しかったですが、選手達と同じ運動場に入って自分もやるという愛情のある中で僕等は育てられました。山口先生に練習中、「辞めてしまえ!明日から来るな!」と怒こられると、「頑張ります。辞めないです」と、個人個人が持っている資質の中に反発係数という突き放せば突き放すほど跳ね返ってくる力が強かったのですが、今は、そんなこと言えば練習に来なくなって辞めてしまいます。能力が低下しているのではなく、好きなことや得意なことはいくらでもします。そのような仕掛けをどう作れるかが現在の指導者の方々にとって非常に重要です。昔とは違い突き放したら、もう返ってこないということがあるので、上手く手繰り寄せる方が効果的ではないでしょうか。僕はリーダーシップのテーマで言うのですが、最近は「俺の背中を見てついて来い」では流行りません。最近の若い子供達やプレーヤーは背中を見せたら逃げていきます。向いておいてあげないといけません。関心を示してあげ、コミュニケーションを取る方が反応も良くモチベーションが高くなり、上手く惹きつければついてきてくれます。きつい練習をさせないのではなく、やる意味が解ればちゃんとやります。やる意味がないのにそれをさせてはいけません。それによってどう鍛えられるのか、どういう形で力になるのかを説明できれば彼らの中で納得してやります。これを乗り越えた時に自信や達成感を味わうことが出来ると思うのです。もしやらせるなら期間は短く、成果とセットにして練習させてあげればいいと思います。人間は面白いもので、自分で少しでも上手くなったと気付いたり、感じられるようになれば練習も楽しく、面白いものに変わります。これは特徴だと思います。
   
 同志社大学で岡先生に指導してもらうのですが、3時から5時半を過ぎて練習していると怒るのです。「練習は良い癖を身につけるためにする。ダラダラするのが癖になるのならやめてしまえ。2時間までに全部の力を出し切る癖を身につけろ、ただ、一つの形、フォーム、動作、筋肉を身につける為の練習は別途時間が必要だ」と言うのです。4年生の時に、決勝で慶応大学と対戦するのですが、慶応はスクラムが強い、同志社は強くないということで、ゴール前でスクラム組まれたらどうするかという練習をしていました。すると、先生は「スクラム組まれる確率もわからず、トライを取られるかどうかもわからない練習はしなくてもいい。その場面になったら必死になって死ぬ気で止めろ」と言うのです。それでボールを廻してトライを取る練習に切り替えるとみんな急に元気になりました。しかし、その試合は、ゴール前のポジションでのスクラムばかりで必死でした。普通なら取られるのでしょうが、必死で止める。その気持ちが大事だし、取られたら取り返すという切り換えも重要です。負けても死なない、またする機会がある、その時に同じミスを繰り返さないと教えられました。この考え方は簡単にできそうで中々できないもので、スポーツだけに限らず全てに通用する気がします。
   
 その後、イギリスのリッチモンドというチームでラグビーをするのですが、このチームの人達は誰が見ていても見ていなくてもすごく練習します。日本の厳しい練習は監視、管理があるから出来るのであって、これがなくなった瞬間にほとんどの人達が手を抜きます。ところがリッチモンドの選手は自分の為にやるので徹底されています。何をやる時も常に全力を出し切る、この気持ちが重要です。これが先ほど言いました「良い癖」なのです。
     
 人間は意外に理屈っぽくなく、感情で動いたりします。心の豊かさがないと上手くいかないのではないかと思います。指導される子供達に練習を通して教える事で常にすごい思考力があって体力がある主体性自発性の溢れるチームづくりができるのだと思います。 ありがとうございました。
   

【プロフィール】平尾誠二(ひらおせいじ)

1963年1月21日生 京都府出身
略    歴
○中学校入学と同時にラグビーを始める。
○伏見工業高校3年時に全国大会優勝。
○同志社大学入学後、当時史上最年少(19歳4ヵ月)で日本代表入り。
  全国大学選手権大会3連覇を果たす。
○1986年に(株)神戸製鋼所に入社。
  1988年より7年連続日本一の偉業を達成(V1〜V3はキャプテン)。
○1987、1991、1995年のワールドカップに日本代表として3大会に連続出場。
  特に、1991年にはキャプテンを務め、日本代表初勝利を飾る。
○1997年2月から2000年11月まで、日本代表監督。1999年、第4回ワールドカップ出場。
○神戸製鋼ラグビー部「神戸製鋼コベルコスティーラーズ」のゼネラルマネージャーとしてチームの運営に当たる。
○2000年3月、特定非営利活動法人(NPO)「スポーツ・コミュニティ・アンド・インテリジェンス機構」
  (略称「SCIX」)を設立し、理事長に就任。
○2004年、「2011年ラグビーワールドカップ招致実行委員会」ゼネラルマネージャーに就任。
○昨春、同志社大学大学院総合政策科学研究科で修士学位を取得。
○(財)日本ラグビーフットボール協会評議員・理事。

主な著書
「日本型」思考法ではもう勝てない  ダイヤモンド社
勝者のシステム 勝ち負けの前に何をなすべきか  講談社
知のスピードが壁を破る 進化しつづける組織の創造 PHP研究所  など

       
     

 




 
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